大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和24(れ)908 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人信部高雄上告趣意について。

しかし、刑法二四九条一項の恐喝の罪は害悪の及ぶべきことを通知して相手方を

畏怖させることにより財物を交付させる犯罪ではあるが、その害悪の告知は必らず

しも明示の言動を要するものではなく、自己の経歴、性行及び職業上の不法な勢威

等を利用して財物を要求し、相手方をして若しその要求を容れないときは不当な不

利益を醸されるの危険があるとの危惧の念を抱かしめるような暗黙の告知を以て足

りるものであるからこれによつて財物を交付せしめるときは恐喝取財罪を構成する

ものと認むべきである。ところで、原判決の引用した第一審判決の判示事実中「、、、、

前記A方外三ケ所に於て同人外三名に対し中央区aBの招待券五〇枚乃至百枚を交

付し一時金を貸して貰いたいとか又は招待券を買つてくれと申向けて、暗に金員の

交付を要求し同人等をして若しこの要求に応しなければいかなる危害を加えられる

やも図り知るを得ないと感得畏怖させた上その頃数回に合計一万円を交付せしめ、、」

の判示は被告人が前記C、D及びEに対しても被告人の粗暴の性行経歴を同人等が

かねて知悉しているのを利用して金員の交付を要求したのは同人等が被告人の要求

に応じなければいかなることをされるか解らないとの畏怖心を同人等に起させるに

足る暗黙の害悪の告知をしたものでありこれによつて同人等をして畏怖心を起さし

め財物を交付せしめたことを認定判示しているのである。そして被告人が同人等に

対して害悪の通知をしているという原審の右認定は原判決挙示の証拠就中被害者C

の第一審公判廷における供述中「、、、断れば後がうるさいんではないかとは考へ

た」旨の供述、同人に対する検事聴取書中同人の供述として「、、、相手の要求に

応ぜざれば何をされるか判らないので金を何時も渡して居りました、、、、又金を

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やらねば何をされるか判らないと思つて三千円Bに届けさせました」旨の記載、同

Dに対する司法警察官聴取書中同人の供述として「、、、Aという男は僕がとれな

い金の勘定を取つてやつたのに僕が行つたらいやな顔をしたり六な返事もしないの

でしゃくにさわつて下肥をうちの中へまいてやつたといつて帰りました、、、実は

私も後がうるさいと思ひまして出してやりました」旨の記載、同Eに対する司法警

察官の聴取書中同人の供述として「、、、その時F自身でおれは与太者の兄貴分だ

と言つて来ましたので私も之れも与太者だと思ひました結局後がうるさいと思つて

金を貸したり招待券を買つたりしました」旨の記載、被告人に対する強制処分にお

ける判示訊問調書中「、、、Aに加へた乱暴もあつて金を出さなければ或は同様の

暴行を受けるのではないかと相手方が恐れを為して金を呉れた事と思ひます」旨の

記載に照してたやすく肯認することができ、その間反経験則等の違法はない。され

ば被告人がC外二名に対し害悪を告知しよつて同人等を畏怖させた原判決認定の事

実は原判決挙示の証拠によつては証明されないから原判決には理由齟齬の違法あり

との所論は採用するを得ない。所論は結局事実審たる原裁判所の裁量権に属する事

実認定を非難するに帰着し上告適法の理由とはならない

よつて旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

検察官 小幡勇三郎関与

昭和二四年九月二九日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 沢 田 竹 治 郎

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 岩 松 三 郎

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